住宅の維持管理について(外壁編)
前回の続きです。
新築時から、様々なものが経年劣化していきます。
前回取り上げた住宅設備機器は生活に直結しているだけに、故障した場合は即修理しなければいけません。では、次に修理が必要な場所は?となると、外壁や屋根といった外部となります。
「水さえ漏ってなければいいから、内装を刷新して住みやすくしたい!」といった声もありますし、実際に不動産会社が扱っているリフォーム物件もたいていこのような考えで工事をしてあることが多いです。
しかし、家の寿命を考えると、一番お金をかけるべきなのは屋根と外壁です。
弊社は様々なリフォームも行っていますが、「知らず知らずのうちに雨漏りが起こっていてシロアリに食べられていた」ということが多く見受けられます。表面に出ていなくても、雨漏りが起こっていれば腐朽や食害が発生してしまうのです。こうなると、家の耐久性が格段に落ちてしまいます。
住みやすさとしては内装をきれいにしたい気持ちもわかりますが、家のことを考えるのであれば、内装よりも先に外装のリフォームを勧めるようにしています。
外壁の劣化原因について
石川県の外壁は、全国的に見てもかなり過酷な環境になっています。
サイディングのメーカーであるニチハの正直な営業に、耐久性について話を伺ったところ「石川県では、カタログに記載されているメンテナンス周期の半分だと思ってほしい」と言われました。10年の塗装周期なら5年、15年の塗装周期なら7~8年ということです。
今回のOB訪問の結果でも、10年ももたないのではないかと思います。
これには、
- 高温多湿
- 凍害の影響を受けやすい
- 塩害
の3点が影響していると考えます。
高温多湿
高温多湿となる夏場は、カビやコケの胞子が外壁に付着し、汚れを栄養としながら適度な雨や湿度で繁殖してしまいます。冬には一度死にますが、翌年には死んだ同胞を栄養にさらに繁殖を繰り返すのです。特に、南道路敷地で北側隣地にも住宅が建っている場合には、壁の下半分が緑色になっているほど繁殖している場合があります。
予防として、定期的に汚れやカビ・コケを洗い流すことが大事です。土台水切から1メートルの範囲や、軒の出で雨があまりかからない部分が汚れているので、高圧洗浄や柔らかいブラシを使って汚れを落としてください。
凍害の影響を受けやすい
凍害とは、染み込んだ水が凍ることで膨張し、内部から破壊することです。日中も2℃や3℃寒い地域であれば、一日を通して氷が解けることが無いのですが、石川県の平野部では、日中に氷が解けて水となり、夜間に凍り、日中に溶けて…を繰り返すので、凍害を発症しやすいのです。
予防策は、水を染み込ませないように塗膜を確保することです。サイディングは、一度凍害を受けて剥離してしまうと、塗装してもすぐに内部から膨張し、その部分の塗膜を破壊してしまうことが多いです。コーキングの劣化やサイディングのクラック(亀裂)にも同様に注意が必要です。
塩害
石川県は南北に長く、長い海岸線を有する地域であり、日本海からの強風を受ける地域でもあります。沿岸部では、当然塩害による塗膜の劣化やガルバリウム鋼板等の金属部の錆の発生が起こります。「海岸線から○○km以上離れれば大丈夫」という線引きは難しいですので、高温多湿に対する対策と同様にこまめに水で洗い流すことが重要です。
軒下、笠木の下、窓下、ポーチ内等は雨が直接当たりにくい場所で、雨による洗い流しが期待できないので特に注意です。
外壁の維持管理について
外壁を維持管理するには、まず現状を把握しなければいけません。
ここでは、多く用いられている窯業系サイディングを例に説明をしていきます。
なぜならば、最も使われている材料なのに、最も劣化が早いからです。私は、劣化が早いうえに製造メーカーの保証も得られないため、塗装品の窯業系サイディングは新築に勧めないようにしています。下見板(木の板)の方がまだ、経年劣化による美観の劣化は少ないと思います(紫外線による変色はしますが、色あせや剥離とは違い風合いと受け取れるため)。
劣化の順番としては、
- 外壁の色あせ
- チョーキング
- 塗膜の膨れ・剥離
となります。
1.や2.は紫外線による劣化なのでを止めることはできませんが、3.は上記のような要因が誘発している場合があります。そうならないように、できるだけ汚れの目立たないように、定期的に洗浄しておくことが重要です。
凍害のところでも触れましたが、塗膜の剥離までいくと急速に劣化が進みますし、塗装しても止まらない可能性が出てきます。なので、チョーキングの状態で塗替える必要があります。
一般的な塗装品だと、10年から15年に一度塗り替える必要があるそうです。
シーリングも同時に打替えた方が安全です。
かかる費用は、およそ130万円です。仮に10年で130万円だとすると、
130万円 ÷ 10年 ÷ 12か月 = 約1.1万円/月
となります。
塗替え時に塗る塗料により塗替え周期は異なりますが、同じ周期で塗替えとシーリングの打替えを行っていくとすると、常に1.1万円を月々貯蓄する必要があります。
これは外壁のみなので、屋根の塗替えや修理を含めると、もう少しかかってきます。
住宅の維持管理にかかる費用
「住宅設備機器の更新」と「外壁の塗替え」にかかる費用を足すと、
7千円/月 + 1.1万円/月 = 1.8万円/月
が必要になるという結果になりました。屋根の修繕や内装の修繕を考えると、2万円でも厳しいくらいですね。月々のローン支払いとは別にこれだけの貯蓄をしなければいけないのは、現実的には難しいのかもしれません。
家を建てる動機は様々ですが、結婚か子育てが一番多いと思います。子供が小さいときに建てて、10年後とすると、小学生の高学年から中学生くらいの年齢になっているはずです。その先は高校、大学となると、子供にお金がかかることが目に見えています。車も軽自動車一台というわけにはいきません。ちょうどお金が無い時に、一番メンテナンスしなければいけない時期が重なってしまうのです。
ローンは返済のギリギリに借りてはいけないということですね。
今回は「住宅設備機器の更新」と「外壁の塗替え」について、かかる費用を試算してみました。家を建てる時はもちろん、建ててからも参考にして頂ければ幸いです。
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